中国のインターネット市場は、いま、大きな変革を迎えてきています。アリババの一強、バイドゥの一強という時代から、Tencent(テンセント)という企業の躍進が始まってきています。
そもそも、日本経済は少子高齢化によって、2050年には日本の国内消費人口が3分の2まで減少するといわれていて、経済を考えると、中国のこういった市場は無視できません。
それゆえ、中国インターネット市場の動向は、しっかりと把握しておきたいですよね。今回の記事は、中国のインターネット市場で大きな飛躍を遂げている、Tencent(テンセント)について解説していきます。
Tencent(テンセント)のwechat、sogouについても触れて解説していきますね。
Tencent(テンセント)とは
Tencent(テンセント)公式ホームページ 日本版
http://tencentjapan.com/
Tencent(テンセント)とは、1998年に中国深センで設立され、2004年に香港証券取引所に上場した、インターネットプラットフォーマーの企業です。
Tencent(テンセント)の主な提供サービスとしては、WeChat(微信)、テンセントQQ、テンセント・ビデオ、テンセントゲームズ、検索エンジン「Sogou」、Tencent Cloudなどとなっています。簡単に言えば、日本の楽天市場や、ヤフーなどの超大型プラットフォーム提供会社です。
中国では、アリババ、テンセント、ピンドゥオドゥオ、ディディ、美団といったところが、主なITの大型企業となっています。特に、中国の2大スマホ決済サービス「アリペイ」と「WeChatペイ」は、中国の決済サービスの大きなシェアを持っています。
それゆえ、Tencent(テンセント)は、香港ハンセン株価指数の構成銘柄の1つになるくらい、大きな銘柄になっていますし、創業者の馬化騰はアジア1位の富豪ともいわれています。2015年1月には時価総額で世界第5位となる約5900億ドル。これはトヨタの3倍とされるくらいの時価総額です。
テンセント 2021年 企業ブランド価値が世界5位
ロイター通信の情報で、イギリスの調査会社カンターによる最新の世界のブランド価値トップ100社調査「ブランドZ」で、1位はアマゾン(6840億ドル)、なんとテンセントは、5位にランクイン。5位でも、2400億ドルなので、日本円だと、1ドル100円として、計算したら、24兆円ですよ。
今まで、テンセントよりも、上位だったアリババグループが7位。
テンセント飛ぶ鳥落とす勢いで伸びてますね。
ゲームパブリッシャーとしてのテンセント
テンセントがすごいのは、ゲーム領域の強みもあります。
2020年12月8日に米モバイルアプリ調査会社のセンサータワー(SensorTower)が発表した統計によると、全世界のモバイルゲームの、アップルストア(App Store)とグーグルプレイ(Google Play)での11月の合計売上高は20億1千万ドル。日本円に換算すると、約222,450,720,000 円になる計算です。
このうち、30%近くのシェアを持っているのが、中国系モバイルゲームパブリッシャーだが、テンセントは、圧倒的な差で1位という状況。
2020年10月16日発売「天涯明月刀」は、11月になっても、中国のアップストアのモバイルゲーム部門でトップ5に名を連ねている状況。
2017年には、オンラインゲームの売上高が約978億元(約1兆6600億円)にまで成長。
ちなみに、日本でも、スマホゲームメーカーとして、テンセントは活躍しています。
例えば、
- ワンパンマン
- 聖闘士星矢
- 新信長の野望
- 牧場物語
などのスマートフォン向けのゲームを発売、提供しています。
他にも、メジャーなゲームタイトルとして、
- honor of kings
- PUBG モバイル
なども有名な、テンセントのゲームソフトですよね。
実際、この二つのスマホゲームタイトルは、2021年上半期のスマホゲーム売上ランキングの1、2位という状況でした。どちらも、2021年の上半期売上だけで、1600億円を突破しています。
どちらの、スマホゲームも、iOS、Androidの両方のOSに対応。初期無料、途中課金のビジネスモデルなので、どれだけ、ゲームのクオリティやイベント性が高いか、考えてしまいますよね。しかも、この二つ、オンラインバトルアリーナを提供するサービスなので、このゲームアプリケーション自体が、プラットフォームなんですよね。
日本のスマホゲームベンダーでは、ポケモンゴー、サイゲームのウマ娘くらいです。ランクインしたのは。
モバイルゲーム業界では、もはや、最強ともいわれるくらいのレベルになっています。しかし、その陰にあるのは、やはり、wechatだと思われます。ウィーチャットがあってこそ、スマホゲームの流通プラットフォームとしての立ち位置を強化できたのではないかと思います。
そして、このスマホゲームの強さを活用して、タイなどでは動画配信サービスなどでも台頭してきています。映画などの動画も配信しているので、ネットフリックスなどのようなプロバイダー的な立ち位置ですね。ちなみに映画の制作などもテンセントは始めています。
さらに、テンセントは、eスポーツの展開も強化しており、多くの大会へのスポンサー展開なども行なっています。これから、eスポーツは、配信コンテンツのひとつとなっていくので、そこの興行収益もとっていく感じなんでしょうね!
ゲーム、アニメ、映画といったデジタルコンテンツの王道路線での展開が目立ちますね!
スマホゲーム UNDAWN 2021年秋に登場!
テンセントゲームスは、2021年秋に、
世紀末の荒廃した世界を旅するオープンワールドのシューティングアクションゲーム「UNDAWN」を、PC、iOS、Android向けでリリース予定。
UNDAWN 公式 ホームページ
https://www.undawn.jp/
ゾンビゲームなので、好きな人は多そうですね!
しかも、UNDAWNは、世界同時で出すんだそうです。
キャラクターのイラスト見ていると、アメコミ風なイラストです。
ガンアクションや、クロスボーとかでゾンビや、ほかの生き残った人間たちと戦っていくゲームみたいですね。
ゾンビゲームは、一つのジャンルとして確立してきたくらいですので、ヒットしそうですね。
テンセント ゲーミング クラウド リリース
テンセントは、スマホゲーム開発において、多くのノウハウを保有しています。
それも、グローバル展開して、世界一課金されるスマホゲームを開発できるほどのノウハウです。
そんなノウハウを活かして、構築された、オンラインゲームの開発、運営に必要な機能を、SaaS形式で提供したのが、テンセントゲーミングクラウドです。2021年9月9日に提供を開始しました。
もちろん、ゲーム開発メーカー向けのものになっています。
主な機能は、
・セキュリティ
・エミュレータ
・音声配信
の機能のようです。
ゲームセキュリティに特化したソリューションは、不正ツールの利用、ゲーム内アイテムの不正売買、総当たり攻撃などをモニタリング。
iOS、アンドロイドに対応していて、セキュリティレベルをアップでき、スマホゲームの運営環境がハイセキュリティになる仕組みです。「キング・オブ・グローリー」に導入済みの仕組みだそうです。
エミュレータは、世界各国の携帯キャリア・ネットワークの環境をシミュレーションできる機能です。世界各国のゲーム環境をチェックできる機能ですね。
wechat(ウィーチャット)とは
ウィーチャットとは、テンセントが提供するメッセージングアプリのことです。LINEのようなサービスだと思ってください。
wechat(ウィーチャット) 日本公式サイト
https://www.wechat.com/ja/
中国で人気No.1のアプリで、利用者は全世界で12億人といわれています。
2011年にウィーチャットは誕生して、システム開発を通して
- 決済
- ミニアプリ ミニプログラム
- webサイト
- ライブ動画
- ショートムービー
- ボイスメッセージ
- ネットショップ
と、いろいろな機能を持っています。
このようにwechatの機能を書き出すと、Facebookにも似ていますね。
YouTube shorts や TikTok のようなショート動画やライブ動画配信もできるので、今では、wechatのことをスーパーアプリと呼ぶ人もいます。
そもそも、ウィーチャットは、中国で、ホントによく使われていて、ウィーチャットの平均利用時間は、1日4時間利用する人が、wechatユーザーの34%もいるんだとか。めちゃくちゃ人気ですね!
wechat(ウィーチャット)は、20以上の言語版があり、200の国と地域をカバーしているので、多くの国で活用されています。
月間アクティブユーザー数(MAU)は2020年3月末時点で12億300万人
引用)ダイアモンド チェインストア
テンセントの時価総額がアリババを抜き中国一に! 躍進の背景と正しい見方
https://diamond-rm.net/technology/61210/
1日のWeChat利用頻度は21回以上が約4分の3を占めており、WeChatは毎日頻繁に利用されている非常にアクティブなアプリ
引用)中国マーケティングラボ
WeChatのリアルな利用実態が明らかに?!
在日中国人女性のWeChat利用実態調査 結果発表
https://monipla.com/china-smmlab/page/survey_bojapan_2020
このくらい活用されているのです。
wechatを活用しておけば、中国人向けの越境ECや、コンテンツマーケティングには、かなり有利に働きそうなのがわかると思います。実際、日本の企業や、自治体も、ウィーチャットの公式アカウントを制作して、運用していたりしています。ウィーチャットであれば、グレートファイヤーウォールによる影響が少ないため、中国の方に視聴してもらえるからです。インバウンドコンテンツであれば、大きなメリットですよね!
ちなみに、日本のLINEが、ミニプログラムを積極的に展開し始めているのは、まさに、このウィーチャットの動きを模倣しているのでしょうね。
ウィーチャットのミニプログラムは、アプリの中で展開することが可能なアプリケーション、ソフトになります。
2021年7月15日現在の日本のLINEアプリにおいては、高級アパレルブランドのルイ・ビトン、ヤフオク、出前館などが展開していますが、そのほとんどは、LINEの派生サービス、例えば、LINEマンガとか、LINEクーポンなどのアプリになっていますね!
ミニプログラムは、ユーザーが本体のアプリをダウンロードしてさえいれば、そのアプリプラットフォーム内で利用できるサービスなので、ユーザーは、アプリの再ダウンロードなどが不要です。そういった点でも利便性の高い、ミニプログラム。日本でも普及強化されていくのでしょうかね。それとも、日本は、デジタルが苦手なので、一つ一つ、アプリのダウンロードをする文化になるのでしょうかね。はたまた、アプリは、面倒だから、全部Webツールでいいっ!ってなるのかとしれませんね。
Wechat ミニプログラム mau
ウィーチャットのミニプログラムのユーザー数や、利用量を示すデータが出てきたのでご紹介します!
aldwx.comが、2021年7月21日に発表した 2021年上半期ミニプログラムインターネット発展白書 で、ウィーチャットのミニプログラムの利用者数が掲載されていました。
2021年6月時点で
・ミニプログラムの数は700万超
・月間アクティブユーザーは9億人
・デイリーの平均使用時間は20分超
とのこと。
ミニプログラムで、利用が伸びているジャンルは
ライフサービス、旅行、オンラインショッピング、ビデオとのこと。
参考サイト
36 kr Japan
WeChatミニプログラム、1日あたりのアクティブユーザー数が4億1000万超
https://36kr.jp/144943/
Wechat Weibo 利用シーンの違い
中国でも、snsは、利用目的ごとに、使い分けされています。
ウィーチャットと、ウェイボーを比較すると、こんな感じです。
- 情報収集なら、ウェイボー
- アクセスが欲しいときもウェイボー
- 知人、友人とのやりとりは、ウィーチャット
個人差もあるので、使い分け、きっちりではないでしょうけどね。
ただ、これも、ウィーチャットの公式アカウントが徐々に増えてきているので、変わるかもですね。
そもそも、ウェイボーを使う目的は、海外のトレンド、旅行、観光情報を調べるために使っていたりします。これも、ウェイボーだと、グレートファイャーウォールをかいぐぐった情報を取得できる可能性が高いからです。
しかし、そういった海外トレンドニュースがウィーチャットから得られるようになると変わってきそうですね。
WeChatは、日本のLINE的な使われ方なんですよね。だから、調べてすぐ共有できるアプリの方が便利になりますからね!
中国検索エンジン市場 シェア2位 sogou
中国検索エンジン市場では、シェアで2位といわれているsogou。
これも今では、テンセントの配下の企業です。
wechatにも、この中国検索エンジン市場のリーダーであるsogouのアルゴリズムが導入されてきており、より市場シェアは増していくと思われます。
そもそも、中国の検索エンジンといえば Baidu(百度)のイメージが大きかったと思いますが、このwechatとの融合などを通して、中国検索エンジン市場は sogou が大きく躍動していくことでしょう。
実際に、中国の検索エンジンのシェア率をstatcounterで調べてみると、
2020年5月~2021年5月の1年間の推移で見てみると、
2021年5月には、デスクトップPCでの、検索シェアは、sogouが、1位になっていました。
参照 statcounter
https://gs.statcounter.com/
とうとうBaidu(百度)を抜き去ったのです。
動画共有 快手 bilibili ビリビリ
その他にも忘れてはいけないのが動画共有サービス。いわゆる、YouTubeのような動画共有サービスである快手と、ショート動画のサービスの、bilibili ビリビリ ですね。動画共有は、快手というアプリで、SONYとも連携しています。2021年には、快手は、中国国内のショート動画市場では、なんと、No.2。
tiktok(ティックトック)に続く、二番目の位置になっているのも目が離せません。ウィーチャットユーザーを囲い込んでのことでしょうが、大きい市場になってます。
ビリビリも、動画共有サービスとして、大きく伸びていて、ライブコマースチャンネルなどで、さまざまな通販で活用されています。
それも近年の成長率が高いので、もしかしたら、中国にて、1番になる可能性も高いですね!
メッセンジャーアプリ「QQ」
テンセントQQは、インスタントメッセンジャーのアプリです。
enjoy Japanの2021年1月発表の記事によると、中国で月間アクティブユーザー数は約8億人です。
日本語版のアプリもあります。テンセントQQは、Google Play 、Apple Storeからダウンロードできるので、日本でも、Android、iPhoneから利用できます。
テンセント 楽天 への出資でも話題に!
テンセントは、2021年に楽天市場を持つ楽天への出資も行いました。ニュースなどで話題になりましたね。
外国資本ということで、楽天からの情報流出が気にされている状況でした。
楽天的には、中国市場進出、越境ecの狙いなんだと思います。アメリカ市場進出、うまくいきませんでしたからね。
このテンセントによる楽天への出資については、会員をはじめとする顧客情報や、楽天市場に出店する店舗などの情報の流出が懸念されています。
しかし、ビックデータ的な部分での購買データの流出も怖いと思います。テンセントがメーカー業を始めようとして、日本で売れている製品の類似商品をプライベートブランドとして製造して、安く販売されたら勝ちようもないですからね。
まとめ 中国インターネット市場 Tencent(テンセント) が これからも成長!?
いかがでしたでしょうか。Tencent(テンセント)について。
記載したように、Tencent(テンセント)には、WeChat というプラットフォームがあります。LINEのようなアプリなので、これによって、ユーザーの囲い込みができているテンセントは、大きな強みを持っています。
これは、ゲームにしろ、動画にしろ、そのマーケット拡大において、最大のメリットですね。そして、検索エンジンシェアにおいても同様です。
sogouの躍進には、wechatも一役買っていることでしょう。
ECのシェアについては、アリババのシェアが大きいのは事実ですが、徐々に、この構図も変わってくるかもしれません。
テンセントのこれからについては、注目度大ですね。
日本での越境EC市場でも、wechat、テンセントは、大きなアクセントになるでしょうしね。